【キセコン】とある殺し屋の一日
「だって、そうじゃないですか。昔っからずっとこんなお子様状態は変わらないし、大体お嬢さんが俺を育てたってのからして、おかしいですよ。俺が五歳のガキの頃から、お嬢さん、そのナリじゃないですか。さっきの親父だって、俺のこと、お嬢さんの兄貴だって思ってましたよ。食い物だって、いっつも稲荷だし、稲荷以外は食わないと言っても、過言じゃないですし」

「そんなこと、どーぅでもいいじゃないよぅ~。他人にどう見えようが、よいっちゃんがあたしのこと、ちゃんとわかってくれてりゃいいのよぅ~」

わからないから不気味だって言ってるんですが、と思いつつ、与一は背に藍を貼り付けたまま、歩き出す。
藍は風車を振り回しながら、時折背中で伸び上がったりして、祭りを満喫している。

「ん~、このお祭りが終われば、本格的に夏になるわねぇ。ああ、やだな~。夏はよいっちゃんのお布団に入ったら、容赦なく蹴り出されるんだもの~」

「暑いんですから、わざわざ人にくっつく意味がわかりません」

「冬だって、入り込んだらよいっちゃん、怒るじゃないよ」

「女郎じゃないんですから、男に引っ付いて寝るのは、やめたらどうです」

途端にばしっと、後頭部を叩かれる。

「ったい!! ちょっとお嬢さん、風車って意外と痛いんですよ。後頭部ばしばし叩いて、阿呆になったらどうするんです」

「やかましいっ! 何よ、よいっちゃんは女郎屋で、女抱きながら寝てるっての? 女郎はよいっちゃんのお布団に入っても良くて、あたしは駄目なわけ?」

むきーっ! と藍は、与一の頬にかぶりつく勢いで、後ろから吠える。
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