【キセコン】とある殺し屋の一日
「お参りって・・・・・・。どこに?」

嫌な予感がする。

今は貴族の行列の通る、大通りの端のほうだ。
行列の最終到着地点である社は、かなり遠い。
社に近くなるほど、庶民は近づけないのだ。

「お祭りだもの~。流鏑馬は、目玉の社じゃない~」

「ここからですか」

やっぱり、と思いつつ、与一はちらりと背後を振り返った。

「かなり距離ありますよ。行くなら、降りてください」

「やだ。このままよぅ。失礼なことばっか言うから、お仕置きなのよぅ~」

再びばたばたと、足を揺らす。
冗談ではないと、与一は、ぶん、と腰を捻るように、上体を振った。

「にゃあ~。振り落とそうったって、そうはイカの壺焼きなんだからね~っ」

「それを言うなら、塩辛です。そんなことより、降りてくださいっ! こんな重りつけたまま、社までなんて行けませんよっ」

「重りとは何よぅ~っ! もぉ、また失礼な口利いてぇ! さー、さっさと向かいなさいってば!! ぜぇったい降りてなんか、やらないんだからね~~っ!!」

ぶんぶんと振り回されても、藍は剥がれない。
まるでヤモリだ。

「さぁっ! だっしゅよだっしゅ!! れっつらごーっ!!」

与一の腰を膝で挟み、藍は風車をびしっと先に翳した。

結局最終的には、与一は藍に言い負かされる。
言い負かされるというよりは、相手をするのが面倒になった与一が折れるのだが。

今も仕方なく、与一は藍を背中に貼り付けたまま、京処の北側にある社へ向かって走り出した。
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