悲しみの果てに


「いない・・・」


屋上も教室も心当たりのある所は捜した。


あたしは中庭のベンチに座り、手の中のメロンパンを見つめる。


「もー・・・食べちゃおっかな・・・」


「――それはマズいだろ」


「えっ!?」


「返せっ」


あたしの手からメロンパンを奪ったのは・・・


「さっきの柄の悪い男!!」


「・・・てめぇ・・・なんちゅーあだ名付けてんだよ」


「あ・・・すいません・・・」


「やっぱウゼー女。」


男はメロンパンを頬張りながらそう呟く。


「ん?・・・ギター?」


「あ?ああ。」


男の肩にはギターのソフトケースがかかっている。


「あなたが弾くの?」


「・・・んだよ。ただのチャランポランかと思ったかよ」


「ううん。音楽やる人に悪い人はいないよ」


「なんでそう思うんだよ?」


「だって、あたしもギター弾くもん」


「ふっ・・・なんだよそれ」


そして男はあたしを“変な女”と言った。




< 3 / 10 >

この作品をシェア

pagetop