悲しみの果てに
――次の日
混み合う箱の中。
若い女と男が入り混じった締め切った空気。
「凄い人気なのね…」
年齢層から見ても結構メジャーな気がする。
「“23's”(トゥエンティーサーズ)か…」
前座と言っても皆が掲げているのは23'sのグッズ。
(もしかしたらあの男の先輩のバンドより人気なんじゃ…)
なんて考えてると証明が眩しくなる。
「キャーッ!!」
女子の黄色い歓声がライブハウス中に響き渡る。
彼らは3ピースバンドのようだ。
「今日は…俺たち23'sが前座をやらせてもらいます。たった3曲だけですが…聴いて下さい」
真ん中に立ち、そう挨拶するのはあの柄の悪い男。
ギターはレスポールで、ボーカルもやるようだ。
「1曲目は…“イノセント”」
男は呟くように言う。
昨日の無愛想さなんて微塵も見せずに、音楽にのめり込んでいるのが分かった。