超短編　『招待状』　最後のディナー編
最後のディナー
「おい、管理部長が呼んでいるぜ。ばれたみたいだな」

生産管理部から戻った同僚の本田が、俺を見ながら笑いを浮かべた。

「そうかい。あの件か。やっぱり怒られるよな、ハハ」
俺は本田に苦笑いを返した。

「気をつけろよ。最近不景気だから、いつ首切られるかわからんぞ」

「でも、退職金やら失業保険で、しばらくは生きていけるぜ」

先週の発注を一桁間違えた。

残業続きでうっかりパソコンに入力をする数字を確認せずに確定してしまった。

直ちにそのデータは工場へ送られ、作らなくてもいい製品をガンガン作り始めた。

その間違いに気がついたのは、昨日の夜だ。

工場長からメールで納品が遅れるとの連絡があったので、電話を入れた。

「お願いしますよ。納期を決めちゃっているんだから、遅れたらマズイんです」

「そう言われてもな、量が多いだろう。今回の発注は」

えっ、量が多い？
いつもと同じはずなのに、、、、。

「ちょっと待ってくださいよ。量が多いって、いつもと同じ量の発注ですけど」

「そんなことはない。こちらへ来ている発注書は、１２００個だ。営業さん頑張ったなって、、、」

「いや、こっちが発注したのは、120個ですよ」

「ほんとかい。こっちの書類では1200個になっている。何度も確認したし」

「げ、ストップしてください。120個でいいんですから」

「いまさら、ストップといわれてもな、もう800個は作ったぞ」

「は、はっぴゃく、、、」

そんなわけで、あまり売れない製品を800個も作ってしまったのだ。
注文があった120個は納品するからよしとして、残りの680個をどうするかな。
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