出会いは密室で[完]
あれ…。
聞こえてたの…?
恐る恐る顔をあげると、
目の前にはなぜか
桐野くんの顔があった。
「だ、だって、セーター貸してくれないって言うから...」
「俺、セーター『は』やんねーっつったんだけど」
彼は目を細めながら
『は』を強調してそう言った。
「...?」
「はぁー…。俺、そこまで性格悪くねーから」
一度ため息をついてから、
あたしの頭にバサッと何かをかぶせた。
「これ...って…。」
「汗臭い、とか文句言うなよ」
桐野くんがあたしの頭にかぶせたのは、
ちょっと汗のにおいが混じった
学校のジャージだった。