チョコ色の放課後


『もしもし?先生、どしたの?』


2度目の電話に直は驚いた声。


「ん?月がすっげぇ綺麗だからさぁ、それを言いたくて。今日は星も綺麗だよ。」


俺は、灯りのついた直の部屋の下に車を停めて…

直に電話をした。



どこへ向かうでもなく走り出した車は、やっぱりここへ向かってしまう。

頑張ってる直へのプレゼント…


って言いつつ、実は俺が直の顔見たかっただけなんだ。



「直…下みてみ」


携帯を耳に当てたまま、不思議そうに星を見上げる直。



俺の言葉に、キョロキョロと上を見たり横を見たりする。



「直、下だってばぁ!」



直は窓から携帯を落とすんじゃないかって思うくらいに驚いて…



『先生!!先生…会えたぁ。嬉しい!!バレンタインに先生に会えたぁ…』



俺の姿を見つけて、大粒の涙を流す。


この距離でも見えた。



キラキラ光る宝石のような涙…



本当は、ここであいつを抱きしめたかった。


でも、直はこの距離で満足した。


だから、俺も満足。




2人で見上げた夜空には、満天の星と、大きな黄色い月。




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