幸せというもの。
あたしはいつも通りの時間に帰ってきた振りをして家に戻ってきた。
「ぱぱ、まま、ただいまー!」
今日で二回目の発言。
言ってみたもののやっぱり違和感を感じる。
すると遠くからなにやら袋を持って、スリッパをパタパタとならしながらお母さんはやってきた。
「お帰り、希ちゃん。今、花瓶を落としちゃったの。
すぐに捨てに行くから、お買い物に行く準備しておいで。」
さっき本人があたしのことを酷く言っていたのに、
私の前だとこんなにも優しい表情で話してくる。
そして今、お母さんは花瓶を割っただなんて嘘をついた。
半信半疑の状態だったけど、これが作り笑いだと、いつも嘘であたしをごまかしてたんだと思うと、すごく胸が締め付けられて、
苦しくて苦しくて・・・それ以上に・・・
悲しかったんだ。