藍色の砂
8. 天秤
少し経ってからだった。
兄貴から『結婚は延期になった』
と聞いたのは。
『考えさせてほしい』
と咲妃さんは応えたらしい。
『だから今、信用取り戻してるとこ』
と兄貴は軽く笑った。
どうしてそんな答え出したんだよ…。
すがるような目でボクを
見上げた最後。
それさえ振り切ったというのに…。
──突然鳴り響く、真夜中の電話。
眠れない夜を
二人して過ごしてたんだね。
受話器から聴こえた
微かな嗚咽。
『コウくん』って何度も
繰り返す。
拳を握りしめて
理性を保ち続ける。