藍色の砂
『ん…どうなんだろう?
自分じゃわからないや。』
『似合ってるよ?コレにして
正解だった。じゃあ切ってくね~。』
大胆にハサミを入れていく。
真剣な目つきになるこの瞬間が
たまらなく好きだった。
普段見れないレアな顔って
言ったらいいのかな。
とにかく視線にドキドキする。
徐々に混雑する店内。
待つ人もチラホラ居て、
キミを指名する人も居た。
次の予約をしてる人も。
あっという間にカットは
終わって仕上げにワックス。
前回してもらった髪型とは
また違った雰囲気で
大人っぽい。
相変わらず上手い。
『もし出来たら…今夜電話するね。』
送り際、確かにキミはそう言った。
でも一度も着信は鳴らなかった。
仕方がないんだ。
兄貴が今日も立ち寄ったんだろう。
そう言い聞かせて
眠れない夜を過ごすんだ。
ボクはこれからもずっと、
誕生日やクリスマス、
あらゆるイベント時を
キミと過ごすことはない。
ボクは二番目だから。
それでいいと思ったんだ。
例え間違った選択をしていても
キミを失う方がはるかに怖かった。
キミを知ったあの日から
こうなることは
約束されていたというのに…。
それでも待ち続けてしまうボクは、
きっと誰より哀れなんだろう。