藍色の砂
11. 砂の城
兄貴はようやく一般病棟に移った。
言語障害もなく、
少ししたらリハビリが始まる。
着替えの荷物を持って
病室を訪れた時のこと。
『咲妃……』
扉に手を伸ばすと
中から声が聞こえて手が止まる。
『ごめんな……俺、女々しいよな。
咲妃の気持ちちゃんと受け止めな
きゃいけないのに。』
『陽……』
『でも目が覚めた時、咲妃が居て
くれて…嬉しかった。夢の中じゃ
手を掴むことも出来なかったから。』
『…そうなの?』
『あぁ。逃げてく咲妃をずっと追い
かけてた。名前呼んでもスッと消え
て居なくなる。』
『私は…ここに居るよ?』