藍色の砂
『仕事中でしょ?大丈夫?
ていうか、ここで働いてんだ?』
『うん!あ、コウくんならタダで
切ってあげるよ。いつでも言ってね。』
『ハハハ。そりゃどーも。』と
言いつつ、内心では
ガッツポーズのボク。
『じゃあ、戻るね。』
キレイな栗色のストレートヘアーを
揺らし、背を向けて歩いてく。
徐々に離れてく後ろ姿に
消せない想いが溢れ出て、
今までのボクでは
有り得ない行動だったと思う。
『…あの!』
ゆっくり振り返ったキミに言う。
『いつ行ったら…切ってもらえんの
かな?予約…した方がいいの?』
声なんかうわずっちゃって、
カッコ悪い…。
テクテクとまたボクの元へ来た
キミは恥ずかしそうに
『今、携帯持ってる?』と言った。
静かに出すと
『お店の番号入れとくね』って。
お店か…とテンションが下がる。
そりゃそうだよな。
彼氏の弟だし。
でも…わざわざ入れる必要ある?
名刺とか渡して終わりなんじゃ
ないのかな?