チョコレート王子とコーヒーお姫様
ミルクチョコレート






あれは忘れたくても忘れられない。





新しく高校2年生になった私、中原 沙紀(なかはら さき)はいつも通り本を読んでいた。



クラスの皆は席替えをしたばかりで、新しい隣近所に胸を踊らせていた。




(席替えなんて、何のためにあるんだろう…)




皆と違って私は、人との付き合い方があまり良くなくて、皆から¨雪女¨って名前で陰口を言われてる。



それには私も納得する。




黒ぶちのメガネの奥から、冷たい目で皆を睨んで、話しかけられたとしても素っ気ないそぶりを見せてしまう。






でも、皆を睨んでしまうのは、ただメガネの度が合わなくて、目を細めてるだけで。



話しかけられて素っ気なくなるのは、何を話していいかわからないから。




外見はまさに雪女。










「隣、お前?――よろしくな」









ちょっとだけ気を沈ませていると、横でドン、と机の置く音がした。


――この声………聞いたことがある。




私は少しだけ高鳴る胸をぎゅうっと堪えながら、その人を見た。









「―――…神崎君…」











なんの因果が知らないけど、よりにもよって神崎君が私の隣の席に?



彼、神崎 真弘君は一言でいうと¨ムードメーカー¨だ。



いつもクラスの話題の中心にいて、神崎君が1人になった時を見たことがない。





私と正反対の神崎君が隣に…。








「あ………よろ――」

「神崎ぃ!席が離れて寂しいよぉ!!」
「アタシも真弘の近くがよかったぁ!」







私が挨拶をしようとしたら、一斉にクラスの皆が神崎君に寄ってたかった。



まぁ、当たり前か……。




私が挨拶しなくても、皆からしてもらえるもんね…。
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