チョコレート王子とコーヒーお姫様
幸せだった数学の時間はあっという間に過ぎていって、時刻は午後12時半。
昼食の時間には、いつも私はお弁当を持って屋上へ行く。
屋上はあまり人気がなくて、人があまり来ない。
唯一、心を落ち着かせることのできる場所。
「うわぁ…青天だぁ…」
屋上の扉を開いた瞬間、目に飛び込んできたのは真っ青な空。
屋上に1歩踏み出せば、そよ風が私の髪をなびかせる。
「伸びたな……」
背中の真ん中当たりまで伸びた黒い髪。
それをうっとうしがるように後ろに払うと、私はいつもの特定席に向かった。
飛び降り防止、または自殺防止のフェンス。
しかし、そのフェンスはある1カ所だけ壊れていて、そこからフェンスの向こうに行くことができる。
私はそれをつい最近見つけて、今では常連。
「よいしょ…」
私はそのフェンスの穴を見つけると、穴をくぐり向こう側へと場所を移した。
座れるか座れないかの幅しかないその場所に、私は座ると足を屋上から投げ出す。
前に1度だけ、靴が落ちてしまったこともあって、靴は脱いでる。
私はお弁当を食べ始めながら、神崎君のことを考えていた。
「どうして、いい奴だって言ってくれたんだろう……」
やっぱり同情?
それなら数学の時みたいに接してくれているつじつまも合う。
(…ちょっと悲しいな……)
気持ちがしょげてしまって、私はお弁当を食べるのをやめた。
いろんな気持ちでお腹がいっぱいになってしまった。