チョコレート王子とコーヒーお姫様
お弁当を片付けて、空を見上げる。
こんな時でもメガネのピントが合ってない……。
私は仕方なく、メガネを外した。
景色は変わらないけれど、抱え込んだ気持ちが少し軽くなった気がした。
メガネってそんな効果あった?
透き通った風が私の頬に触れて、体全体に触れてきた。
空を仰げば青空に雲がふわふわ浮いていて、いろんな形になっていった。
「はぁ……」
私はため息をついた。
しかし、悩み事はない。
あるとしたら多分、神崎君のこと。
私がぼーっとしていると、胸ポケットから規則正しい振動を感じとった。
(あ、電話だ……)
私は携帯をポケットから取り出す。
画面には相手の電話番号と¨水島 戒斗¨という文字が写されていた。
「もしもし」
私は携帯を耳にあてて、そう言った。
すると、携帯から少し高めの男の声が聞こえた。
『ちょっと、俺の話、聞いてんやぁー!』
水島 戒斗は生まれも育ちも完全な大阪人。
そんな彼と私は幼なじみ。
……らしい。
生まれも育ちも大阪で、今も大阪にいる彼と一体、どうやって幼なじみになったのだろう。
戒斗と初めて会ったのは、彼が私の家に訪問したとき。
まぁ、特に気にすることはなかったけど。
「―――何があったの?また、彼女にフラれたの?」
『……なんで沙紀はわかるんや?』
「何回、戒斗の話聞いたと思ってんの?…んで、また戒斗が原因?」
私は戒斗が100%原因ってわかっていた。
だって彼女いるのに、他の女の子と手、繋いでたりするんだよ?
ありえない。