チョコレート王子とコーヒーお姫様
『今回は、俺は何もしてへん!向こうが浮気して振ってきたんや!』
あ、今回は違うんだ…。
でも珍しい…。
戒斗はかなりのイケメンで、付き合った女の子に浮気されたことなんてなかったのに……。
「そっか…。勘違いしてごめんね?」
『うぅ…、沙紀は優しいなぁ。俺、沙紀に会いたいわ……』
「優しいなんて大袈裟だよ。ここじゃ、私は¨雪女¨」
そろそろ、お昼休みが終わる。
私は、よいしょ、と立ち上がりフェンスの穴から中に戻る。
『沙紀はめっちゃ優しいよ。¨雪女¨なんかちゃう、¨お姫様¨や』
「戒斗、ホントに大袈裟」
『なぁ、マジでそっちに行ったらあかん?』
すごい真剣なのが声でわかる。
ホントに戒斗は私に会いたがってるの?
「…なんで戒斗ここに来るのに、私の許可が必要なのよ……」
『じゃあ、行ってもえぇ?』
「好きにしたら?」
『やったぁ!!なら、俺、沙紀の家に泊まるから!』
「え!?ちょっと待っ――」
『じゃあ沙紀、ついたら電話するわ』
ぷっと切れる電話。
戒斗は嵐のように去っていった。
(…私の家に止まる?それって………)
「……同居?」
いや。
どうせ、たったの3日間ぐらいだ。
同居なんてそんな大袈裟に言うものじゃないよね…。
私があれこれと考えていると、聞き慣れた学校のチャイムが耳に響いた。
「やばい!遅れちゃう!!」