チョコレート王子とコーヒーお姫様
「アタシ、原田 美羽(みゆ)。美羽って呼んで。こんな不良だけどよろしくね」
原田さん、いや、美羽ちゃんが私にスッと手を差し出してきてくれた。
「…中原沙紀です。よろしく」
私は美羽ちゃんの手を握ると、ギュッと美羽ちゃんに握り返された。
「タメ口でいーよ。多分、あの子もそうしたがる」
「う、うん。……わかった」
あの子、というのは長身の女の子だろうか。
私は手を離そうとした、その時…
バタン、と。
図書室のドアが開いて、ドアの向こうには長身の女の子が息を切らして仁王立ちしていた。
その手には、黒ぶちの眼鏡。
「あったよ、お前の眼鏡」
長身の女の子は私のところに来て、真っすぐな瞳を向けてきた。
そして、視線を下へと落として…。
「あぁー!!美羽、抜け駆けしたなぁ!!」
「アンタが飛び出て行ったからよ」
長身の女の子は私と美羽ちゃんが握手しているのを指差して、悔しそうに言っていた。
(……何に悔しがってるんだろう?)
それに私が首を傾げていると、美羽ちゃんと手が離され、長身の女の子に握手された。
「美羽に抜け駆けされちゃったけど…アタシは篠崎 律。よろしくな!!」
「あ、えっと、私は……」
すると、ツンと美羽ちゃんに肘で突かれた。
「タメ口だよ、沙紀」
私はハッと思い出す。
「私は中原沙紀。よろしくね」
名前を初めて覚えてもらった。
そして、初めて出来た女友達に私は気持ちが高ぶっていた。
だからなのかな…
私は自然と笑顔になってた。
「!…沙紀、お前ヤバい…!」
「まぁ律、落ち着きなって。…アタシもビックリだよ」