遊び人な彼に恋しました。


それからは、もうほとんど記憶がない。



ただ覚えているのは……



さくらが静かに教室を出ていったことと……



さくらの頬に、綺麗な雫が伝ったことだけだった……




引き止めることさえ出来ない……



ましてや、抱きしめることも出来ない……



なのに、無性にさくらを抱きしめたい気持ちになった。



バカだよな……



さくらの名前すら……呼ぶことが出来ないのに




「先輩……」



「……あっ、平田」



委員会から帰ってきた平田が、座り込んでいる俺に合わせるようにしゃがんだ




「春、先輩……泣いてる……?」



優しい平田の声。



女の子らいし、可愛らしい声……



でも、違う……



俺の求めている声じゃない……



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