遊び人な彼に恋しました。


もう一度だけ音色にお礼を言って、俺は走り出した。


さくらじゃなきゃダメなんだ……


俺のそばには、さくらが居なきゃダメなんだ……



俺には、さくらが必要なんだ……



ただ走って、走ってさくらの居そうな場所を探した。


学校に、さくらの家。


街中に、公園。



探しても探しても見つからない。


電話には出る気配ないし、メールにも返信はない。



「はぁ―…」


少し暗くなった空を眺めて、深くため息をついた。


―――――――――……



――ガチャッ


気持ちが沈んだまま、我が家の玄関を開けた。


結局、さくらを見つけることは出来なかった。



会いたいのに、会えない。



それがもどかしくて悲しくて仕方ない……



会いたい。



さくらに、会いたい。


会って、抱きしめたい。



華奢で、誰よりも愛しいさくらを、この腕で抱きしめたい……



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