遊び人な彼に恋しました。


「帰ろうとしたさくらちゃんを引き止めておいてやったんだぞ―。感謝しろよ」


そう言ってニヤッと笑う兄貴。


「っ……サンキュー、兄貴」


それだけ言って二階にある俺の部屋へと急いだ。



――バンッ


「きゃっ……」



突然開いたドアに驚いたのか、ベッド近くに座っているさくらが、目を丸くして俺を見た……



あぁ、さくらだ……


やっと見つけた……


やっと……


「あ、あの、春、ごめんなさい。勝手に入っ……」


――ギュッ


さくらの話しているのさえ無視して、体を引き寄せ抱きしめた。



「えっ……」


少し戸惑ったような声が聞こえたけど、それさえ無視して強く抱きしめた。



さくらだ……


小柄な体型に、綺麗な髪。


ほんのり香ってくる甘いバニラのような香り。



全てが全て、さくらが俺の腕の中にいると証明してくれている。



「えっ、と……春?あ、あの……」


「お願い。今は黙って……」


「えっ……」


「ちょっと安心してんの。だから黙ってよ……」



お願いだから、黙って俺の腕の中にいてよ……



ずっと……いてよ。



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