遊び人な彼に恋しました。


なんで……わかるのよ……


『今は会いたくない』


『今だから会いたい』


そんな意味の分からない気持ちが、あたしの心の中を入り交じっている。


普段なら間違いなくすぐに会いたいって思うのに……


なのに……


「さくら」


「っ―…」


今思えないのは、きっと……


「楢橋くん……」


この人があたしの心の中に居るから……




優しくあたしの名前を呼ぶ楢橋くん。


街中から少し離れたこのカフェは、人通りが少なく、あたしと楢橋くんを静かな空気で包んだ。


「な、なんで……」


まだ居るの?という言葉が出てこない……


さっき帰ったんじゃないの?


なんで……?


そんなあたしの気持ちを読み取ってか


「さくらが出てくるのを待ってた」


そうはっきり言った楢橋くん。


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