遊び人な彼に恋しました。


「もう俺が何を言っても、さくらは戻ってこないんだな」


「大和……」


――ギュッ


「……え」


強く引き寄せられ、抱きしめられた体。


「本当に無理なのか……。あいつの次でいいから……」


大和……


喉の奥から絞り出すような声に、あたしの心も苦しくなった。


「大和……ごめんね。あたしには春の次なんてないの」


「っ……」


「でも、ありがとう大和」


「なんで感謝されてるわけ?俺?」


声が少し和らいだ。


「だって、大和はあたしの初恋だったからね」


「っ……!今、それ言うの反則」


「ふふっ」


――ギュ―


「ありがとうさくら。俺も大好きだったよ」


痛いくらいに強く抱きしめられてるのに、ちっとも苦痛じゃない。



それはきっと、気持ちが通じたから。


『好き』という気持ちじゃないけど、やっと今お互いのことがわかった。



ね、大和……


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