遊び人な彼に恋しました。


それから黙々とファイルを読んだ。


その間楢橋くんは勉強。



勉強するくらいなら、別にここじゃなくて教室ですればいいのに……


静かな生徒会室に時計の音が響く



一通り資料を読んでファイルを閉じる


「はい。読み終わったから……」


それだけ言ってファイルを楢橋くんに手渡した



「あぁ、って言っても今日はもうやめとくよ。今から読んでたら遅くなるしな」


思った以上にファイルを読みきるのは遅くなってしまい、もう夕日が部屋を赤く染めていた



「矢吹はこれから帰るのか?だったら送って帰るけど?」


「……え」


意外な言葉に正直驚いた



「いいよ。寄るとこあるし。」



「そっか。じゃあまた明日な」


“また明日”


まるであの時に戻ったようなセリフ



「う、ん……また明日…」



ゆっくりと言葉を発し、生徒会を後にした。


今さら胸がドクドクいっている



2人の空間の方がよっぽど緊張するはずなのに……


“また明日”というセリフの方に胸はうるさく鳴り響いた



好きなのは春……


そばに居たいのも春……



でも好き“だった”のは……



少し薄暗い廊下を、一人寂しく歩いた……




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