妄想彼氏
「じゃあ妃さん私はこれで」

「水季の事よろしくね」

「それはこっちの台詞」

妃さんはニコニコと笑いながら手の平を少し広げじゃあね、と言って去って行った。

「優しそうな人だな」

「"優しそう"じゃなくて"優しい"んだよ」

私に少しだけ笑顔が戻り、藤坂君はとても嬉しそうにニカッと笑った。

「なんか前田の周りって優しい人多いな。弥生とかさ」

「そう思えばそうだね。私の周りには優しい人が……いっ…ぱい…」

『優しくしてやってんのはこっちなんだよ!!』

「―っ!」

でもすぐに私には笑顔消えた。

やっと自由になった、と思えば私はすぐにまた縛られ、自由を失うのだ。


悪い悪魔に取り付かれたお姫様のように。




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