妄想彼氏

新しく出たモンブランをカゴの中にいれた。

「お…前田じゃん」

名前を呼ばれたような気がして私は振り向いた。

「藤坂君?…こんにちは、どうしたの?」

「やっぱり前田だ…お前モンブラン好きなんだ」

「うん、デザート系はほとんど好きだよ、美味しいよね」

すると、藤坂君は私の横に来て、モンブランを手に取った。

最後の一個…だ。

私は藤坂君の手にあるモンブランを見つめた。

「…これ、後で一緒に食べよ」

藤坂君はニコッと笑った。

学校ではあまり見ない笑顔に思わずキュンとしてしまった。

会計を終わらし私は藤坂君と小さな公園に向かった。

「ちょうどベンチあいてるじゃん」

屋根が上に付いてるベンチは珍しくあいていた。

「いつもなら誰かいるはずなのに…」

「…だな」

私と藤坂君は隣どうしに座り、モンブランをだした。

私が一つ出そうとすると藤坂君が私の手を握り、それを袋の中に戻した。

「これ食べるの!」

藤坂君は一つのモンブランを私の前に出した。

「えぇっ一緒に!?」

「?おう、だってお前好きなんだろ?残しといたほうがいいだろ」

なんて優しいんだ…。

藤坂君の後ろに眩しいくらいの光が見えるのは私だけだろうか。

「はい、口開けて、目ぇ閉じながら」

なんだろう?

まさか隠したりは…。

すると私の口に何かが入った。

「口閉じて」

「美味しい!」

私の口に広がる甘い柔らかな感触。

「もっと欲しい?」

藤坂君は意地悪な笑みでじっと見てきた。

「な…何ですか?」

「敬語なんて使わなくていいし」

私は顔を赤くした。

「…可愛い…」

可愛い?さっき可愛いって!!!!!

あまりにも声が小さかったので聞き間違いと思い、そのまま流した。



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