妄想彼氏
日が沈むちょっと前。
近くにあるベンチに座った。
「利緒?」
酷く落ち込み、俯いていると、聞き覚えのある綺麗な声が聞こえた。
「っ!弥生…」
頭がパニック状態になる。
誰か…誰か…SOS!!
私がゆっくりと顔をあげると珍しく眼鏡を掛けた弥生が立っていた。
「…どした?はい、ハンカチ」
弥生は自分の鞄に入っていたハンカチを私に差し出した。
「…そっか…裕也…全然気付いてないんだね」
私は藤坂君は弥生の気持ちに気付いてないと言った。
さっきの事を言うと本気で悲しむだろうと思い、言わなかった。
「利緒が泣く事じゃないよ…私が悪いの」
ようやく泣き止んできた私に弥生は優しく微笑んだ。
でも、その瞳は今にも涙を流しそうだった。
「けじめついたらちゃんと告白するから、安心して」
私はコクッと頷いた。
「…傘貸してあげるから行こ」
私は傘を公園に忘れたから弥生に折りたたみ傘を貸してもらった。