一目惚れ【短編】
「そういえば、前に会ったこと無いかな?なんか、会ったことが有る気がするんだよね」
「実は、前に電車の中で赤いシートを落としてしまって、遊君に拾ってもらったんです」
遊君は、私の言葉に納得しながら、手を叩いた。
「ああ、なんかそんな事が有ったかも!!って、俺、名前言ったっけ?」
うわっ!しまった!!
いつも、心の中で名前を呼んでるから、つい出ちゃった。
私は、口を押さえたまま固まってしまう。
「…………」
ヤバイ、泣きそう。
せっかく近づけたのに、自分からヘマするなんて……。
「えっ?あれっ?俺、変な事言った?」
遊君は、いきなり私が固まっちゃってるから、オロオロしてるし。
これ以上、こうしてても仕方ないよね。
私は、俯きながら今までずっと見てた事を話した。
終わった。
そう思ったのに……。