一目惚れ【短編】
現実
いつもと同じ日常。
いつもと同じ電車に乗って、
いつもと同じ席に座る。
いつもと違うのは、遊君が隣に座っていること。
「都姫ちゃん、おはよう。昨日大丈夫だった?」
電車に乗るなりわたしを見つけた遊君は、私に向かって明るく声をかけてきて、横の席に座った。
近過ぎだから!!
隣を向くと、遊君の顔がすぐそばに有って、完全に挙動不審になってしまう。
「昨日はごめんなさい。大丈夫だったよ」
私は、恥ずかしがってるのを悟られないように、普通に振舞ってた。
結構、世間話しながら盛り上がってた。
もちろん、遊君の顔は見れないから、前を向いたままだけど。
ちゃんと話は聞いてたんだよ。
聞いてた
……つもりだったんだけど。
ガッと両頬を掴まれ、無理矢理、遊君の方を向かされてしまう。
「へふはっ☆!?!?」
余りにも意外な行動過ぎて、変な言葉が漏れる。
「都姫ちゃん!聞いてるぅ?」
ちょっ!!!
なにそれーーーー!!!!
マジ恥ずかしすぎだよ。
お友達が見てたら、絶対誤解されるから。
ってか、遊君と同じ学校の制服着た子たくさん居るし。
「き…聞いてるよぉ!」
「いや、絶対聞いてなかったし!!もぉ、都姫ちゃんがボーっとしてるから、降りる駅になっちゃったじゃん」
遊君は、頬を膨らましながら、大きく手を振りながら、電車を降りて行った。