一目惚れ【短編】
『……もしもし』
『そろそろ、観念して出てきてくれないかな?』
『えっ……』
そう言ったまま、完全にフリーズ。
『都姫ちゃん?』
『……遊…くん?』
届いたかどうかわからないくらい、小さい声。
『ああ、桂香ちゃんって子が教えてくれたよ』
『……そっか。本当に来たの?』
私は、ゆっくり窓の方を向いた。
窓から見える校門のところに、寄りかかりながら話している人が見える。
その瞬間、カバンをつかみ校門に向かって走り出していた。
荷物を入れかけていたカバンの口の金具が、走るたびにカタカタと音を鳴らしている。
靴を変えるのももどかしい……。
こんなんなら、ちゃんとすぐに帰っとけばよかった。
いまさらそんな事を言っても遅いね。
勇気がなかったんだもん。
ハーハー言いながら、遊君の所までたどり着く。
『本当に来ないかと思った』
そう言うと、いきなり腕を引っ張られて抱きしめられていた。
ウソッ!!!!
やばいって。
ここ学校の前だし、誰に見られてるか分からないじゃん!!