一目惚れ【短編】

『……もしもし』


『そろそろ、観念して出てきてくれないかな?』


『えっ……』


そう言ったまま、完全にフリーズ。


『都姫ちゃん?』


『……遊…くん?』


届いたかどうかわからないくらい、小さい声。


『ああ、桂香ちゃんって子が教えてくれたよ』


『……そっか。本当に来たの?』



私は、ゆっくり窓の方を向いた。

窓から見える校門のところに、寄りかかりながら話している人が見える。


その瞬間、カバンをつかみ校門に向かって走り出していた。

荷物を入れかけていたカバンの口の金具が、走るたびにカタカタと音を鳴らしている。



靴を変えるのももどかしい……。



こんなんなら、ちゃんとすぐに帰っとけばよかった。

いまさらそんな事を言っても遅いね。



勇気がなかったんだもん。



ハーハー言いながら、遊君の所までたどり着く。


『本当に来ないかと思った』


そう言うと、いきなり腕を引っ張られて抱きしめられていた。




ウソッ!!!!




やばいって。

ここ学校の前だし、誰に見られてるか分からないじゃん!!





< 24 / 32 >

この作品をシェア

pagetop