一目惚れ【短編】
「ごめん。私なんかが遊君の隣にいたらダメなんだって……」
「そんな……なんで…」
遊君は、私の右手を掴み握りしめる。
血が逆流したみたいに、全身が一気に心臓になる。
ヤバイよ、ドキドキがとまらない。
そんな事されたら、言いにくくなるじゃん。
でも苦しいけど、言わなきゃ。
「だって……わたし、可愛くない……から。遊君に、似合わない」
だから……。
離れなきゃ。
「……んな風…かよ」
辛うじて聞こえた声。
小さく口から漏れ出した声は、私の耳に届く前に風に掻き消されてしまう。
握りしめられた右手が、ドンドン強くなっていく。
「ゆ、遊君?手……痛い」
「オレが、そういう風にしか人を見ないと思った?」
男の人を怖いと、産まれて初めて思った。
ジリジリと近寄ってくる遊君に、怖くなって後ずさりしてしまう。
捉えられた右手は、離そうとしても無理で、より一層怖くなる。
「遊…くん…こわ…い」
息まじりの声は、遊君に届いてたのかな?
とうとう、背中が木にぶつかり、逃げ場を失ってしまった。
捉えられた右手は木の幹に押しつけられ、遊君の
顔はドンドン近づいてくる。
辛うじて自由だった左手は、行き場を失い、空中を彷徨っていた。
「都姫ちゃん……」
そう言って、鼻がくっつきそうな位近くに顔が……‼