一目惚れ【短編】
ギュッと目を瞑った。
恋愛経験がない私には、この後どうなってしまうのか、予想も出来なくて、ただ怖さだけが私を支配している。
「どうしたら…分かってもらえる?」
えっ?
ゆっくり瞳を開ける。
目の前には、不安そうな遊君がいた。
「こんな気持ちになったの、初めてだから……ゴメンな。怖かったよな」
そう言うと、ギュッと握りしめていた右手を離し、後ろに下がっていった。
「ゆう…くん?」
「都姫ちゃん、俺さ…恥ずかしいんだけど、こんなに人を想った事がないんだ」
「…………」
遊君は、ベンチに座ると、池の方を見ながら話し始めた。
「今まで、人を好きになった事は有るけど、こんなに相手の事を考えてしまう事が無くて……。どうやったら、この気持ちが都姫ちゃんに伝わるのか分からないんだ」
「……私…ゴメンなさい!恋愛とかした事なくて……あの…」
そう言った私に向かって、少し微笑みながら手招きする。
吸い寄せられるように遊君のそばまでいくと、遊君は立ち上がり頭をクシャっなでてくれた。
一気に顔が熱くなる。
「これでダメなら、俺諦めるよ」
遊君は、私の方を向き直し、咳払いをする。
笑顔から真剣な顔になると、大きく息を吸った。