一目惚れ【短編】
片思い
あれから、3ヶ月。
私は、毎日同じ時間の電車に乗り、密かに彼を見ながら、こっそりキュンキュンしていた。
完全に片思い。
しかも、メッチャ遠くからの。
たまに、一緒に乗ってくる友達との会話で知ったのが、彼が星陵高校の1年生で、【佐伯 遊】君と言う事。
私は、心の中で勝手に遊君って呼んでみた。
勝手に呼んでるだけなのに、なんだか少し近づいた気がして、嬉しくなる。
でも、そんな遊君には、好きな人が居て……。
それを知った日は、完全にヘコんだなぁ〜。
そして、今日も彼を観察。
いつも同じ席に座り、腕を組みながら眠ってしまう。
それを良い事に、参考書を見ていた顔を上げ、観察開始。
時計のブランドや携帯のメーカーを一生懸命見ながら、一つずつ情報を増やす。
我ながら、かなり健気。
そして、必ず1駅前で起きるの。
今日も、同じパターンで降りて行ってしまった。
あーあ。
楽しみが終わっちゃったよ〜。
遊君が降りてから、私は参考書をカバンにしまい、終点に着くまでボーっと外を眺めていた。