一目惚れ【短編】
「ちょっ……遊君⁈辞め……」
ドンドン近づいてくる遊君の顔。
綺麗過ぎだから。
「やめない‼‼」
唇が触れそうな位近くで言うと、そのまま有無を言わさず唇を重ねる。
身体が液体になったみたいに、ジワッと芯から熱くなる。
辛うじて立っていたのは、遊君に手首を掴まれてたから。
「ヤバイ、俺止まらなくなりそう……」
遊君の言葉の意味を考えれるほどの冷静さは全く無くて、そのまま遊君を見つめていた。
「……帰ろうか」
ずっと私を見つめてた遊君が、いきなり離れ後ろを向いた。
いきなり視界が開け、さっきまでのぬくもりを覚えている体は、少しさみしいって……。
「えっ、あっ、はい」
「……マジとまんなくなるから」
そんな遊君の制服の裾を、無意識に掴んでいたわたし。
「あの……遊君…」
多分、今まで生きてきた中で1番の勇気だったかもしれない。
遊君に向けて、手を差し出していた。
驚いた顔をしながら、差し出した手を握りしめてくれる。
ヤバイ、顔が爆発しそう。
恥ずかしい。
ニコっと笑いながら、無言で歩き出す遊君。
その後を、俯きながらついていく私。
歩きながら、もう色んな些細な事が気にならなくなったし、綺麗になる努力をしようって思った。
これから、遊君に似合う女の子になれる様に頑張るから、もう少し待っててください。
そんな事を思いながら、遊君の背中に向かって
【好き】
ってつぶやいた。
おしまい☆