一目惚れ【短編】
そう思っているうちに、遊君が毎朝乗って来る駅に着いてしまう。
結局、なんか分からないままだったな……。
私は、フゥーと息を吐き俯いた。
その時、視界の中に見た事が有るストラップが……。
これって、もしかして!?
すぐに遊君のポケットを見ると、ポケットからはみ出したケータイに、いつも付いているはずのストラップが無くなっていた。
遊君は、すでにホームに降りていってしまってるし……。
私は、咄嗟にそのストラップを拾い、ホームに降りた。
背後で、ドアが閉まる音がきこえる。
かろうじて人ごみの中から遊君を見つけ、肩を叩いた。
「あっ、あの!!」
「えっ?」
振り返った遊君は、見ず知らずの私を見てキョトンとしている。
そんな顔も素敵!!
でも、そんな事言ってる場合じゃないよね。
私は、すぐに手に持っていたストラップを、遊君に差しだした。
「あの…これって……」
私の持ってるストラップを見て、慌ててポケットの中からケータイを取り出す。
「うわっ!!それ、俺のだわ。ありがとう!」
そう言ってくれた遊君は、まっすぐに私を見ていた。
うわっ!恥ずかしい!!
「いえ、そんな。電車のなかに落ちてたので……」
自分から声をかけときながら、つい恥ずかし過ぎて顔を背けてしまう。
それにしても、勢いとはいえ、なんとも大胆な行動をしちゃったなぁ〜。
「これ、大事なやつなんだ。良かったら、お礼させてよ」
差しだしたストラップを、受け取る遊君の手が、私の手に触れる。
遊君と触れた手にドキドキしまくってるのに、さらにそんなお誘いなんて……。
嬉しいのと、ビックリしたので、固まってしまう。