一目惚れ【短編】

そう思っているうちに、遊君が毎朝乗って来る駅に着いてしまう。

結局、なんか分からないままだったな……。

私は、フゥーと息を吐き俯いた。

その時、視界の中に見た事が有るストラップが……。

これって、もしかして!?

すぐに遊君のポケットを見ると、ポケットからはみ出したケータイに、いつも付いているはずのストラップが無くなっていた。

遊君は、すでにホームに降りていってしまってるし……。

私は、咄嗟にそのストラップを拾い、ホームに降りた。

背後で、ドアが閉まる音がきこえる。

かろうじて人ごみの中から遊君を見つけ、肩を叩いた。


「あっ、あの!!」

「えっ?」


振り返った遊君は、見ず知らずの私を見てキョトンとしている。

そんな顔も素敵!!

でも、そんな事言ってる場合じゃないよね。

私は、すぐに手に持っていたストラップを、遊君に差しだした。


「あの…これって……」


私の持ってるストラップを見て、慌ててポケットの中からケータイを取り出す。


「うわっ!!それ、俺のだわ。ありがとう!」


そう言ってくれた遊君は、まっすぐに私を見ていた。


うわっ!恥ずかしい!!


「いえ、そんな。電車のなかに落ちてたので……」


自分から声をかけときながら、つい恥ずかし過ぎて顔を背けてしまう。

それにしても、勢いとはいえ、なんとも大胆な行動をしちゃったなぁ〜。


「これ、大事なやつなんだ。良かったら、お礼させてよ」


差しだしたストラップを、受け取る遊君の手が、私の手に触れる。

遊君と触れた手にドキドキしまくってるのに、さらにそんなお誘いなんて……。

嬉しいのと、ビックリしたので、固まってしまう。




< 9 / 32 >

この作品をシェア

pagetop