Hight
「次はここ、俺の部屋」
崎本は、リビングの中にあった、もう一つの扉を、カチャ、と開けた。
その部屋は、6畳ほどの洋室。
「崎本の方が広いじゃねーかよー」
「当たり前だろ!誰が好んで狭い部屋使うかよ」
「何で、こんな広い部屋借りてんの。一人にしては十分すぎるだろ」
崎本は、上を向いて溜息をついた。
「一緒に暮らしてた人が居たんだ」
「彼女?」
「そう。何で春樹って何でも分かんの?」
「僕さ、人のこと傷つけるの嫌で、怖がって、現実見なかった時期あってさー。でも、ある人が教えてくれたんだ。『人に接してないから、人を傷つけるんだ』って。そんなんだから人の気持ち分からないんだよ、って言われた」
崎本は、ふ~ん、と言って、全身をぐびーっと伸ばした。
「良かったな」
「え?」
「だって、自分が知ってる人なんて、限りがあるじゃん。その中で、自分の心動かせるほどの奴に出会えたなんて、すげー奇跡じゃん」
「本当だ。良かったー・・・」
僕は、窓の奥のずーっと向こうにある景色を、ゆっくりと眺めた。