Hight
「ここは、もう一つの地球なんだ。ブラックホールの先にある、もう一つの地球」
「もう一つの地球?じゃあ、どっちが本物なの?」
「さあ?それは俺にも分からないな。でも、こっちの世界は、春樹が住んでる世界よりも遅れている。この世界の『今』は、1993年なんだ。分かるな?」
僕は軽く頷いた。
「じゃあ、何で僕はここに呼ばれたんだよ」
男は言いにくそうに、一度俯いてから、僕の顔を見た。
「あー・・・。本当に個人的なことで悪いんだが・・・。実は、春樹のこと、すごく気に入ったお嬢さんが居てよ。そいつが連れて来いって聞かないんだよ」
「は!?それだけ!??」
男は、う~ん・・・と、遠くを見つめた。
「・・・それだけじゃないんでしょ」
いつの間にか僕の口が勝手に動いていた。
男は、驚いたように僕の顔を見た。
「そうなんだよ!違うんだ!いや、それもあるんだけど・・・」
「何?早く言ってよ。僕、さっさと元の世界に帰りたいんだ」
「・・・ごめん。俺、この世界から春樹の住んでる世界への帰り方、知らないんだ」
「は!????どういうことだよ!」
「本当ごめん!」
「じゃあ、どうやって俺をココに連れて来たんだよ」
「それは~・・・。まさか本当に、来れるとは思っても無かったっていうか・・・」
僕は呆れてため息をついた。
「ため息つくなよー。俺だって困ってるんだからさ・・・」
僕は、はっと思い出したことがあった。
「なあ!崎本さんも、僕の住んでる世界から来た人間じゃないの?」
崎本は、また驚いた顔をして、僕を見た。