Hight
「この世界は、春樹の住んでいた世界と同じような道を歩んでんだ。だが、少しずつ違ってる。さっきも言ったように、過去のことは忘れてしまう、ていうのも含めてね。この世界は、確かに春樹の住んでいた世界よりも、遅れている。けど、こっちの世界の方が技術が発達してたりもするんだ。それに、この世界は、『死』が無いんだ」
「どういうこと?」
「ここは死の無い世界。だが、生も無い。同じ人間が、生死をくるくると回ってるんだ。死ぬかなーっと思ったら、また赤ちゃんから始まる。何度も言うが、この世界は過去を忘れる。だから、赤ちゃんになった自分は、何も覚えてないんだ。だが、不思議なことに、中学生になると、ある程度の記憶が戻るんだ。自分が、2度目の人生を歩んでることとかが」
「何か、難しくて分からないんだけど」
「う~ん・・・。この世界に住んでる人間には、家族が居ないんだ。誰かが僕たちを監視して、生死を繰り返させる。そして、ある程度、世界を発展させる」
「孤独なんだ?」
崎本は、ちょっと悲しそうに頷いた。
「僕も、孤独になっちゃうの?」
僕が、悲しそうに聞くと、崎本は、悲しそうに頷いた。
「ごめんな、俺がいらないことして」
「なあ、崎本はどうやって僕の部屋の前に手紙と花を置いたの?」
「さっき言ったろ。この世界は、お前の住んでた世界よりも技術が発達してるって」
「あぁ・・・、そういう機械があるの?すごいね」
「まあ、法に触れることなんだけどね」
「え!?ダメじゃん」
崎本は、そうだな、と言って笑った。
僕が、笑い事じゃないよ、と言うと、また、そうだな、と笑った。
「ねえ、崎本!僕、崎本の弟になってやるよ!」
崎本は、一瞬目を丸くしたが、嬉しそうに笑った。
「でも、俺、お前のこと忘れるかもよ?」
「大丈夫だよ。僕が、思い出させてあげる」
崎本は、また、嬉しそうに笑った。
その顔を見て、僕も嬉しくて笑った。