さくらの恋人
3-5
「大輔‼ まだ大学院に行けなかったこと引きずってるでしょ?」
その言葉に一瞬ドキっとした大輔。
そうなのである。大輔がなぜ音大を卒業した今になって就活中の理由は、大学院に行けなかったためであった。
「そんな何ヶ月も前のことを引きずってるウジウジな奴とは一緒に働きたくないもんね」ハッキリと言い切られた。
入試失敗という人生最大のイベントを春恵に指摘されたが言い返せなかった。
でも春恵はこう続ける。
「でも大輔は手を抜いた訳じゃないんだし、企業なんて星の数ある訳だから、気長に大輔のペースで頑張ろうよっ?」
と叱ってくれた後には必ず前を向かせてくれる。
親友以上な春恵しかできないことに、ただ感謝しかできない大輔であった。
「こうやって落ちる度にビールおごってちゃ、ビール会社から採用あるかもよ?じゃあ私明日早いからさっ」そう言って、ビールを飲み干すと腰掛けていたブランコから立ち上がり、手を振って帰って行った。
大輔も立ち上がり、帰ろうとした時に携帯が鳴った。
企業からかと思い、携帯を取り出したが、電話してきた相手は意外な人物だった。