さくらの恋人
☆第2話~台風時々少女~☆
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「ギリギリ…」と息も絶え絶え言いながら扉を開けた大輔の目に飛び込んできた、明らかにムッとした顔つきの少女。
一瞬、遅刻?と思い時計をみたが、まだ52分。時間には間に合っている。
「あっ、こんにちは。大島さん?」恐る恐る少女の名前を呼び、ご機嫌を伺う大輔。
「遅い‼今何時?普通先生は生徒より早く来て、予習からの予習を繰り返しながら、今日はどんなトークしようとか?どんな風に教えようとか?もっと情熱に溢れた授業をしようと心掛けて生徒の到着を待つんじゃないの?」とまくし立てたのが大輔の生徒の大島千歳である。
「すいません。道が混んでで…」まるで中学生の遅刻理由のような答えをした大輔に千歳は「サクいくよー」とさっきまでの嵐のような不機嫌さは、本当に嵐のようにどこかへ行ってしまったようだった。
「だから、サク先生でしょ。」大輔は聞こえないような声で反論しながら、千歳と教室へ向かった。