さくらの恋人
2-3
二人は教室へ入って千歳はピアノへ、その隣に大輔が座る形であった。千歳がピアノを弾いているのを基本黙って聞く大輔が口を開いた。
「大島さん?」「なに?千歳でいいよ?」この子はレスポンスが早い。「じゃあ、千歳さん?」軽くあしらった大輔だったが「ちぇっ、つまんね~」と返された。
「またテンポが早くなってます。もっとこの部分は感情を込めて、音を体で表現してください」自分で意味のわからないことを言っているのはわかっているが、教えるとはそういうことと大輔は割り切った。「えぇ~わかんないよっ‼だって、あたしが作曲した訳じゃないし、表現とかイマイチ苦手だし。うーん、サクが見本で弾いてみてよっ」千歳は名案を思いついたように言った。半ば強引に大輔がピアノを弾かされた。
♪〜♪~♪~♪~♪
「こんな感じです。わかります?」弾き終えた大輔が聞くと千歳は予想外な回答を返した。