失ったモノ
「みんな、ご飯できたわよ」

お母さんが少し暗い顔でこちらを向きます。

「じゃあ食べてくるね」

「…ああ」

お祖母ちゃんをソファーに残して、イスに座ります。

今日はご飯に豆腐とワカメの味噌汁、目玉焼きにウインナーです。

「わあ! 今日はわたしの好きなメニューだね」

明るく言うも、家族のみんなは暗い表情で各々食べ始めてしまいました。

「えへへ…」

わたしは泣きそうになるのをこらえながら、朝食を食べ始めます。

朝から暗い顔をしてはダメです!

そして重い空気の中、朝食の時間は過ぎていきました。

カバンを持って、わたしは家族に「行ってきます」を言おうとしました。

けれど兄さんが、真剣な表情でお母さんに向き合っていました。

「母さん、こう言うのもなんだけど…もう美羽の食事、用意するの止めたら?」
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