無情エキセントリック
「ハハッ」
蜷川は笑う。心地のいい男の声で、俺が喉から手が出るほど焦がれる男の声で。
「お前、寂しくないのか?」
俺は何を聞いてるんだろう?どうしてこんなこと聞いてるんだろう?こいつも俺と同じ人を避けて生きてるから?俺はこんなに孤独に怯えてるのに、こいつはまるで平気だから。
「女にキャーキャー言われてるから男友達できにくいのはわかるけど、どうして独りなんだ?」
俺がそういうと蜷川はまた短くハハッと笑うと真剣な声でこう言った。
「バカ、お前がいるだろ?」
その時の俺は変だった。涙が右頬をすっと流れていったのが分かった。だってその言葉の反対は俺にも誰かいるって事だから。
「……もしかして泣いてる?」
「う、うっさい!!!バカッ!!!お、俺が泣くわけないだろ!!!」
「かわいい奴。俺に惚れたか?」
「…はぁ?なんでそうなる……」
「好きだ」
「はぁあ!?」
「お前、かわいいよ……死ぬほどかわいい……なぁ俺のこと好き?」
熱に浮かされたようにまるでうなされているみたいにそんな事を呟くもんだから俺もなんだか赤くなってわなわなと震えた。
「お、俺は男だぞっ!!分かってんのか?」
「女だよ」
「!!」
俺は何も言えなくなってパニくった。どうしよう?何を言えば?
「ぷっ……あはははぁ!!!」
俺が困って口ごもっていると蜷川は馬鹿でかい声で笑い出した。
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