男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
レッスンの時は自分を突き放したり、
悪口を言ったりするのにそれ以外は笑顔で接してくる。
購買につき、適当なパンを購入すると2人は裏庭に向かう。
購買部は芸能コースと一般コースをあわせてひとつしかないために嫌でも注目をあびた。
「キャー!陽くぅん!南くぅん!」
「サインちょうだーい!」
一瞬にして自分達のまわりを女子生徒達が囲む。
南は営業スマイルを張り付けて、今は無理だと言うがファンは聞かない。
ぎゅるるるる、
刹那、ことりのお腹がなる。
それを聞いて騒いでいたファンはおとなしくなった。
「...陽?」
「俺、お腹空いてるから早く昼ごはん食べたいんだ。どいてくれる?」
お願い、と両手を合わせて首をかしげれば黄色い歓声は一層大きくなる。
南はいつのまにそんな方法を習得したんだ、と陽を見た。
ざ、と開かれた道を二人は気まずそうに歩く。
「さすが、陽だな。」
「そんなことないよ。」
南が自分を褒めるときは、あまり好きではない。
なんだか裏がありそうな気がした。
(...っ、あの二人は、あたしのものなのよ。)
2人は、自分達を見ている怪しい影には気づかなかった。