男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「南?」
呆然としている南を不思議に思い、声をかけたが応答しない。
「南、聞いてる?」
「っ、お、おう。」
やっと気づいたらしく、ことりを見て少しだけ頬を赤くした。
彼はばっと立ち上がった。
「...ごめんな、陽。」
「え?」
「今までお前に八つ当たりしてて、ごめん。」
思わぬ謝罪に驚いた。南は恥ずかしそうに頭を掻くと、とっととここから出ようぜ!と声を張り上げる。
ことりは、嬉しそうに大きく頷いた。
「あ!南、あそこから出られないかな?」
扉の上にある小さな小窓を指さして言うと南はいけるかもしれないと言った。
「けど、俺だとギリギリかも...陽、お前行けるか?」
「うん!やってみる。」
教室内にあった机を扉の前まで運び、ことりはその上に乗って小窓に手をかけた。
思った通り、鍵は内側から開けられるようになっている。
小窓を開くと、そこから身を乗り出した。
「み、南!」
「でれそうか?」
「無理!!高いって!」
ここから出ようとすれば頭から落ちてしまうだろう。
ことりは一旦教室内に戻ろうと思い、
足を机の上に乗せようとしたが肩が邪魔で戻れなくなってしまった。
「う、嘘!?」
「陽?」
「も、戻れない!」
「はあ!?」
「ど、どうしよう!」
「と、とりあえずそこから誰か呼べ!」
2人であたふたしていると、足音が聞こえる。
こちらに徐々に近づいてきているそれに、ほっとすると同時に恥ずかしくなった。