男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「私、謝らなきゃ...。」
「何を?」
「今まで、っ、私、お兄ちゃんの事、何も知らなかった、の。
ただ、皆から愛されてるお兄ちゃんが羨ましくて、嫉妬してっ、
お兄ちゃんは優しくしてくれてたのに、酷いことばかり、してた。」
「・・・。」
「ごめん、なさい。」
ぽたり、ぽたりと涙が零れ落ちる。
彼女が顔をあげて兄を見れば、彼もまた、泣きそうな表情だった。
刹那、急に陽に引き寄せられて強く抱きしめられる。
「っ、ありがとう。」
少し、陽の声は震えていた。
ことりは彼の腕の中で強く頷いた。
母親はそんな兄妹を見てほっとしたような表情を見せる。
「私は少し、出ていくわね。」
気を利かせたのか、母親は病室を出て行った。
楓はどうすることもできずにその場に立っていると、
ぱちりと陽と目があう。
「...楓、」」
「よう、君。」
陽はことりを離して、涙を袖で拭うと恥ずかしそうに笑った。
「久しぶり。」
「うん...。」
いざ、陽を目の前にすると何を話していいのかわからずに楓は戸惑う。
そんな楓に気づいた陽は、なるべく明るい声で話しかけた。
「ことり、ダンスも歌も下手だっただろ?」
「あ、うん。」
「よく俺のフリできたよなぁ。」
信じられない、とことりを見れば彼女は色々と思いだしたのか頬を赤く染めている。
「ことりは、努力してたからね。」
「そっかー...、ってか、楓、雰囲気変わった?」
「え?」
「いや、前まで他人に興味ないって感じだったのに、なんか...。」