男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「陽君、...僕から、頼みがあるんだけど。」
「頼み?」
「ことりを、コンサートに出させてやれないかな。」
「え?」
予想外の頼みに、陽は目を見開いた。
ことりも、驚きを隠せず楓を見る。
「陽君に比べれば歌唱力もないし、ダンスも下手だけど、
ことりは必死で努力してきたんだ。
それに、ことりのおかげでスカイのメンバーは変わることができた...んだと思う。」
「楓...。」
「僕は、ことりに出てもらいたい。」
陽は迷う。
今まで、スカイのメンバーとして自分はことり以上に努力してきた。
今回は意識不明だった為に、ダンスレッスンをしていない彼は
コンサート用のダンスは完璧に踊れないだろう。
しかし、陽なら短時間で完璧におぼえられる。
楓ならそれを知っているはずだ。
しかし楓は、自身がことりと一緒にステージに立ちたいから
ことりに出て欲しいと言う。
陽はそう解釈した。
「ことりは、スカイのメンバーじゃない。」
「違う!ことりはスカイのメンバーで、俺達の仲間だ。」
はっきりと楓がそういえば、陽は困ったような表情を見せる。
どうすればいいんだろう。
「俺、まだ目を覚まさない方が良かったな。」
ぽつりと、陽は呟いた。