男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「なら、今日、あたしの家に来ませんか!?」
「え!?」
どうしてそうなるの!?と聞こうとすれば、それよりも先に彩乃が口を開いた。
「陽君も一緒に!!」
成程、そういう事か。
彩乃は陽に好意を抱いている為に、陽と仲良くなりたい。
けれど楓に頼むのは気が引けたのだろう。
だから陽と双子である自分に頼んだのだ。
「森山先輩しかいないの!お願い!」
「で、でも、お兄ちゃん今日はダンスレッスンがあるって言ってたから
夜の9時くらいまで家に帰ってこないよ?」
「明日土曜日でしょ!?家に泊まっていきませんか!?
昨日お兄ちゃんが言ってたんだけど、土曜日はコンサートのリハーサルらしいし!
見学行きましょうよ!!」
「ええっ!?無理でしょ?」
「家族って言えば大丈夫ですよ!あたし、何度か行ったことあるんで!」
少々強引な彼女に、ことりは困った。
どんな顔をして楓に会えばいいのかわからない。
それに、リハーサルを見学することになればメンバー全員と会うことになってしまう。
(無理だよ、そんなの。)
「じゃあ、リハーサル見学に行くかどうかは置いといて
とりあえず家に来ませんか?」
お願いします、と手をあわせてきた。
さすがモデルをやっているだけあり、可愛い。
言葉に詰まれば、 ことり先輩! と下の名前で呼ばれた。
「お、お兄ちゃんに聞いてみるね...。」
「有難うございますっ!」
押しに弱いことりは彩乃の頼みに負けてしまい、渋々そう言った。