男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-




___今日、俺も泊まりに行く



陽はそうメールを返すと、楓とレッスン会場へと向かおうと鞄を持つ。

「そういえば、よくことりが女だってバレなかったよな。」

ふと、陽がそんな事を言えば楓は頷く。

「僕も思う。でも、本当にそっくりだよ。ただ、違和感はあるけど。」









(...どういう事だ)

廊下で、教室に忘れ物を取りに戻ってきた郁が話を聞いていたなんて知らずに

2人は談笑を続ける。

教室の扉に伸ばしかけた手を引っ込めて、郁は聞き耳を立てた。



「違和感?」

「うん、陽君の雰囲気とは違うのは確かだったよ。

けど、見た目はそっくりだったし、他のメンバーはきづいてないと思うよ。」


「そっか、それならいいけど...

俺の代わりに妹が男装してスカイに居ましたなんて、

誰にでも言えることじゃないしな。」



ドクン、

郁の心臓が大きく鳴った。

状況の整理がうまくできない。

話しの流れからいくと、陽の代わりに妹がスカイにいたということになる。

そんなの、ありえない。


(今日、感じた違和感はそれだったのか?)


昨日までの陽とは違う雰囲気に戸惑いを見せる。

一体、どういう事なんだろう。



2人の足音が扉の方に向かってくるのを感じたが、隠れようとは思わなかった。

動揺していて、体が動かない。


ガラ、

目の前の扉が開かれた。
< 122 / 213 >

この作品をシェア

pagetop