男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「最近の陽君、変わったと思いませんか?」
突然、彩乃はそう言った。
最近の、と言われて男装していた時の事を思いだし少し気まずくなる。
「雰囲気が変わりましたよね。昔は完璧っていうか、隙がない感じだったのに
今は雰囲気が柔らかくなったっていうか、優しくなりました。
ファンの間では好きな人でもできたんじゃないかって噂があるみたいですよ。」
「へ、へえ...そうなんだ。」
恥ずかしくなると同時に、変な誤解も生まれているみたいで複雑な気持ちになった。
「好きな人、いるのかなあ...。」
彩乃は少しだけ声音を下げて、残念そうに言う。
「居ないと思うよ?そんな話、聞いたことないし。」
だから大丈夫だよ、と言えば彩乃はことりを見て そうだといいな と小さく笑った。
ことりは正直、彩乃の気持ちを応援したい気持ちもあるが
兄とは付き合って欲しくないという気持ちもあった。
彼女はモデルで、兄はアイドル。
もし付き合い、世間に広まってしまってはグループの人気はガタ落ちするだろう。
彩乃も、最近は人気が出てきているがそんな事になれば今までの苦労は水の泡だ。
「あ、じゃああたしはこっちなんで!また後で!」
「うん、ばいばい。」
そして手を振り、それぞれの帰路についた。