男装少女-兄の代わりになった双子の妹の物語-
「ことり!?」
双子の妹の姿を見て、陽は驚く。
「何でここにいるんだよ!」
「お母さんが、お兄ちゃんを迎えに行くって言って、
それで、車の中で待ってたんだけど...」
状況に戸惑いを隠せず、ことりはなるべく郁を視界に入れないようにして陽を見た。
バクバクと自然と早くなる鼓動を無視する。
「そこの窓から、見えたから、」
丁度、廊下の突き当たりにある窓から陽と郁の姿が見えた為に慌てて中に来たらしい。
ことりとしては、正体をバラしてほしくない。
自分が陽のふりをしてスカイに居ただなんて知れたら、
きっと郁は自分を軽蔑するだろう。
騙していたことには変わりないのだ。
そう思った瞬間、ことりは無意識に走り出していた。
レッスン場の構造は大体把握している為に、迷うことなく二人の元に向かうことができた。
「お兄ちゃん、帰ろう。」
ことりの声が震える。
「でも、「お願い。」
近寄り、兄の腕を引くことりをみて郁は目が離せなくなる。
会ったことないはずの彼女が、気になって仕方ない。
胸の奥がきゅう、と締め付けられたような感覚が郁を襲った。
「陽の、妹か?」
絞り出た言葉は確認するためのものだった。
「うん。」
陽は頷く。
郁の声を聞き、ピクリとことりの肩が震える。
ぎゅ、と陽の腕を握る手に力がこもった。